はじめに
ポケモンSVでは171種類の技マシンが登場します。
10万ボルトや火炎放射のような歴代シリーズで活躍しているお馴染みの技もあれば、今回初めて技マシンに登録された技もあります。
その中で一際目を引く技がありました。
それがエアカッターです。
エアカッターとは
威力60、命中95の特殊飛行技です。自力習得できるポケモンは意外と少なく、いずれも物理寄りで使いこなせるポケモンはあまりいませんでした。過去作では4世代の教え技として登場しており、暴風のない時代のサンダーが使っていました。
この技の最大の特徴は飛行技で唯一相手2匹に当たるという点です。
現状のルールでは飛行技の一貫性が非常にいいです。飛行技を半減できるのは電気、岩、鋼タイプの3つですが、電気と岩に強いポケモンが少なく実質鋼タイプくらいになっています。なんなら鋼タイプもサーフゴーとドドゲザン辺りしかいません。
加えて使用率上位に存在するマスカーニャやモロバレル等の草タイプ、ケンタロスやコノヨザル等の格闘タイプ、ウルガモスの虫タイプに効果抜群を突くことができます。
上記の理由により飛行打点は優秀であると言えます。環境に存在するカイリューがノーマルテラスタル神速から飛行テラスタルテラバーストに移行しているのも納得です。
そんな飛行技が相手2匹に当たるという破格の性能……と言いたいところですが、この技の使用率は著しく低いです。それは一体なぜか……理由は威力60という低さにあります。全体技なのでさらに0.75倍になり実質威力は45です。
逆に言えば威力さえ何とかすれば使いこなせるはずです。というわけでエアカッターを一番強く使えるポケモンを探したところ、ドンカラスに白羽の矢が立ちました。
ドンカラスとエアカッターのシナジー
ドンカラスが選ばれた理由はいくつかあります。
まず第一にエアカッターを覚える飛行タイプで一番特攻が高いことです。まあ高いとは言えC種族値105なのでこれだけだとお世辞にも強いとは言えません。
そしてもう一つ、特性が強運ということです。強運は急所に当たりやすくなる特性ですが、エアカッター自身にも急所に当たりやすい効果があります。これに持ち物のピントレンズを加えることで、エアカッターが確定急所の全体技に化けます。
エアカッター以外の技も急所率50%になるので単純にドンカラスの火力補強に成り得ます。剣盾の強運ピントレンズトゲキッスに苦しめられた人ならその強さは分かるはずです。
今作ではトゲキッス、アブソル、ケンホロウが登場しないので、ドンカラス系統が唯一の強運になります。ここも差別化ポイントですね。
しかしながら、確定急所で火力は上がってもそれでも足りません。そもそもドンカラスが技火力、素早さ共に十分な数値とは言いにくいので周りでサポートする必要があります。
火力のサポートは手助け、素早さ操作は追い風やトリックルームが主流ですが、どちらもやろうとすると最低でも2ターンを必要とします。
エアカッターの確定急所の強みはその即時性にあります。最近では気合溜めピントレンズの確定急所サザンドラが増えていますが、これは気合溜めを使う1ターンが必要となるためリスクを伴います。せっかくエアカッターが即座に打てるのですから、火力と素早さのサポートも同時に1ターンでやってほしいところです。
そんなポケモンがいるわけ……
いました。
イシヘンジンとは
ガラル地方より登場した岩単タイプのポケモンです。種族値が100-125-135-20-20-70という極度な偏りをしていますが、最大の特徴は特性のパワースポットです。
これは場にいるだけで隣のポケモンの火力が常に1.3倍になるという特性です。手助けの1.5倍と比べると少し控えめですが、手助けと違って場にいるだけでいいのでイシヘンジン自身も行動することができます。
イシヘンジンは地ならし、岩石封じ、ローキックといった攻撃しながら相手の素早さを下げる技を豊富に覚えます。素早さ種族値も70と低くないため、拘りスカーフを持たせることで最速130族まで抜くことができます。
これにより、イシヘンジンで攻撃しながら相手にダメージを与えつつ素早さを下げ、隣のドンカラスの火力1.3倍にする……といった行動を1ターンで行うことができます。
ドンカラスイシヘンジンの並び
この2匹を並べた際の有効な盤面を列挙していきます。
①イエッサングレンアルマ
相手はこの指止まれ+トリックルームを使ってくることが多いので飛行テラスタルエアカッター+岩雪崩を押します。グレンアルマがテラスタルを使ってこなかった場合はそのまま倒せますし、岩雪崩警戒で草テラスタルを使ってきてもエアカッターが抜群になるので同様に倒せます。
②イッカネズミコノヨザル
袋叩き+憤怒の拳、もしくはこの指止まれやネズミ斬を絡めてくる場合もあります。ローキック+飛行テラスタルエアカッターでイッカネズミを倒しながらコノヨザルを巻き込みます。イッカネズミがテクニシャンならコノヨザルが倒せますし、フレンドガードでも致命傷を与えることができます。全体技なのでこの指止まれを無視できます。
③寿司+スタンダード
シーズン1のレート上位でもよく見られたような並びです。地ならし+飛行テラスタルエアカッターで取り巻きのマスカーニャやウルガモス、キラフロルを倒せます。ドドゲザンにはローキックが4倍で刺さります。ヘイラッシャはシャリタツと合体すると全能力ランクが+2になりますが、急所は相手のランク上昇を無視するのでエアカッターがとても有効に働きます。
モロバレルはキノコの胞子による圧力を押し付けながら怒りの粉や守るを選択できる厄介なポケモンです。攻撃しないと眠らされますし、かといって集中を守られると不利になってしまいます。エアカッターは怒りの粉の効果を受けないのでイシヘンジンの攻撃と合わせて倒すことができます。
エアカッターは威力60ですが、これに飛行テラスタルの一致補正+急所+パワースポットを加えることで威力234になります。
ドンカラスの飛行+悪技、イシヘンジンの岩+地面+格闘の範囲で弱点を付けるポケモンも多いので、意外と対応できる並びはこれ以外にもあります。
とは言え、この2匹だけで勝てるほど甘くはないので次に残りの4匹を考えていきます。
構築経緯
というわけでドンカラスイシヘンジンの2匹から構築がスタート。
このままだと天地がひっくり返っても追い風構築に勝てません。ドンカラスを使って進化前の追い風ヤミカラスに負けるのは屈辱なので、さすがに対策したいところです。
ドンカラスの飛行技がエアカッターだけ……というのも心もとないにもほどがあります。幸いにもドンカラスは今作から暴風を習得したので是非とも採用したいです。
以上の理由により、まずペリッパーを内定させました。雨を降らせることで暴風を必中にできるだけでなく、追い風や手助けも覚えるのでドンカラスのサポートもできます。
ペリッパーが加入されたので、残りは雨構築で組むのが好ましいと考えました。ランクバトルで雨パを使っていたフォロワーが『手助け雨鉢巻フローゼルのウェーブタックルでサザンドラが飛ぶ』ということを呟いていたのを思い出し、対追い風にも強そうだったのでフローゼルを採用しました。
フローゼルは耐久が低いため、何ターンも場に居座れるタイプではありません。フローゼルが倒された後もテンポを損なわずに戦えるポケモンとして同じくすいすいのゴルダックを採用しました。上から凍える風を入れることで後続のドンカラスのサポートができますし、クリアスモッグでヘイラッシャ+シャリタツに強いのも高評価です。雨パは相手の水ロトムやマリルリなど、水タイプの処理が遅くなりそうなのでゴルダックに草テラスタル+テラバーストを入れることにしました。
最後の枠にはニンフィアを採用しました。全体技のエアカッターと相性の良い全体技のハイパーボイスを使えるだけでなく、火力補強の手助けと削り残しを処理できる先制技の電光石火を無理なく入れることができます。構築の潤滑油として頑張ってもらいます。
構築
個体解説
ドンカラス@ピントレンズ
臆病 強運 飛行テラスタル
努力値:B4 C252 S252
実数値:175-×-73-157-72-135
暴風/エアカッター/悪の波動/守る
今回の主役ポケモンです。パルデア地方の強運ピントレンズトゲキッス枠になります。
強運ピントレンズエアカッターは通りのいい飛行技として使えるだけでなく、それが即座に打てる全体確定急所技という唯一無二の性能です。急所に当たるというのは単に威力が1.5倍になるだけでありません。
①相手の能力ランク上昇を受けない(ヘイラッシャ、サイコシード、蝶の舞)
②自分の能力ランク下降を受けない(バークアウト、ソウルクラッシュ)
③光の壁を無視できる(オーロンゲ、ヤミラミ)
上記のような効果もあるため、威力以上の恩恵があります。
マスカーニャのトリックフラワーと異なり、草テラスタルや飛行テラスタルのヘイラッシャにも等倍以上で入るのがポイントです。
エアカッター以外の技も急所率50%で打てるので、暴風が混乱30%、急所50%とさらに優秀な効果になります。飛行テラスタル暴風が急所に当たると合体したヘイラッシャを一撃で倒せたりするので火力としては充分にあります。
エアカッターの威力は飛行テラスタル+急所で180、パワースポットで234、手助けで270になります。威力以上に通りがいいのでこれだけで相手の2匹を倒せることもあります。
イシヘンジン@拘りスカーフ
陽気 パワースポット 格闘テラスタル
努力値:A252 D4 S252
実数値:175-177-155-×-41-134
岩雪崩/岩石封じ/地ならし/ローキック
拘りスカーフを持つことで相手の上から攻撃しつつ素早さ操作ができます。地ならしは全体技かつドンカラスに無効なので相性がいいです。
岩+地面+格闘の技範囲が結構広く、大体のポケモンに弱点を突くことができます。
特防は壊滅的ですが、物理防御面はかなり優秀で、マスカーニャのトリックフラワー程度の火力なら耐えることができます。環境が割と物理寄りなのも救いで、カイリューの神速が半減なのも偉いです。
テラスタルを格闘タイプにしているのは主にドドゲザン意識です。ローキックで倒せるようになりますし、悪技が半減になるのも便利です。
フローゼルやゴルダックの火力を上げることもできるので、構築全体の火力補強として役立ちます。
ペリッパー@湿った岩
控えめ 雨降らし 悪テラスタル
努力値:H252 B4 C36 D68 S148
実数値:167-×-121-132-99-104
ハイドロポンプ/暴風/追い風/手助け
今作唯一の雨降らし要因です。
耐久力も高く、追い風と手助けのサポートもできるので天候要因以上の活躍が期待できます。
悪テラスタルはイエッサングレンアルマ対策です。悪戯心の挑発を防げるようになるのも地味に便利です。
フローゼル@拘り鉢巻
意地っ張り すいすい ゴーストテラスタル
努力値:H4 A252 S252
実数値:161-172-75-×-71-167
ウェーブタックル/アイススピナー/けたぐり/アクアジェット
雨パの破壊兵器です。
雨鉢巻ウェーブタックルが強力で、等倍ポケモンなら大体一撃で倒せます。手助けを含めると半減でも倒せたりします。
けたぐりは手助けなしでサザンドラを倒せるので、その隙に隣のペリッパーで追い風を使うことで有利に展開していけます。
このポケモンで1匹倒しながら隣のペリッパーが追い風を押せるのが理想の盤面になります。
ゴルダック@命の珠
控えめ すいすい 草テラスタル
努力値:H108 B68 C252 D4 S76
実数値:169-×-107-161-101-115
雨パの破壊兵器その2です。
火力が高いだけでなく、雨状態の高い素早さから凍える風を打てるので後続の展開にも繋げられます。
構築全体が水ロトムやトリトドンに弱いので草テラスタルのテラバーストを採用しています。
クリアスモッグはヘイラッシャ+シャリタツに対して強く出れる技です。
ニンフィア@オボンの実
実数値:201-76-101-154-151-88
構築の補完枠です。
ハイパーボイスによる全体の雑な削り、手助けによる火力サポート、電光石火による削り残しの刈り取りと痒いところに手が届く柔軟なポケモンです。
ヤミカラスの追い風展開に対しても高い耐久力とハイパーボイスで弱点を突けるのが偉いです。
選出
選出①
+
+or
相手に追い風がなく、イシヘンジンが上から素早さ操作出来そうなときにはこの選出になります。イシヘンジン+ドンカラスのエアカッターで相手を削りながら、残りを裏の雨で倒します。
(例)
イエッサングレンアルマ
イッカネズミコノヨザル
寿司
モロバレル
非追い風スタンダード
選出②
+
+oror
相手が追い風軸、もしくはドンカラスでは厳しそうな並びに対しては雨展開からスタートします。ペリッパーの追い風やゴルダックの凍える風が使えると裏のポケモンが動きやすくなります。猫騙し+トリックルームのような相手にはフローゼルのゴーストテラスタルで対応します。
選出③
+
+or
追い風+マスカーニャのようなフローゼルが抜かれてしまう場合。追い風+ハイパーボイスで切り返しを狙います。
(例)
追い風マスカーニャ
動画
この構築の実際の動かし方や、簡単な解説を手短にまとめたボイスロイド実況動画を投稿しました。エアカッターが活躍している場面は想像しにくいかもしれないので、よかったら見てもらえたりチャンネル登録してくれると嬉しいです。
感想
エアカッターを打つと『急所に当たった!』の表記がたくさん見れるので楽しかったです。
雨で場を荒らしてからドンカラスで必中の暴風を打つ……という流れも強力で、今作の飛行タイプの強さを改めて理解することができたと思います。
チームIDもあるのでよかったら使ってみてください。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。